■微差「シェネの入り方」
以前、
マリア・ホーレワが来日した際に、
ホストファミリーとして一週間
お世話をさせていただいたことがあります。
手作りの味噌汁に
「美味しい!」
と、
感動していただいたのが
昨日のことのようです。
そんなマリアに
石島は聞いてみたいことがありました。
マリインスキー劇場で
オーロラを踊った際の映像を見て
「あれ?」
と思ったから。
下記ボタンを押した直後の
マリアのステップを見て、
何か気になりませんか?
ホントに直後ですよ!
※そして、3秒くらい見たら
戻ってきてくださいね。以下同様。
『眠れる森の美女』第三幕、マリア・ホーレワ
石島が気にしたのは、
・
・
・
・
・
・それは、(笑)
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・
「シェネの入り方」。
マリアは、
トンベから入っていました。
バレエ教授法の上位概念である
演技法では、
「シェネには、
二通りの入り方がある。」
とされているそうです。
その二つとは、
・トンベから入る
・グリッサード・アントゥールナンから入る。
演技法ですので、
これらは役柄によって
使い分けられるもの。
1は、
一般人、
身分の低い人、
男性の入り方。
こんな感じです。
開始直後のシェネの入り方に注目。👀
『ドン・キホーテ』リハーサル、ナデジダ・バトエワ
トンベ
・足首が曲がっている
・膝が曲がっている
・踵が床に付いている
・プリエ
からシェネに入っていますね。👀
キトリは、
宿屋の娘(身分が低い)ですので、
演技法的に1になります。
一方、
2は、
貴族や精霊など、
超越的・超人間的存在を表す動き。
オーロラ姫が、これに該当します。
『眠れる森の美女』第三幕、永久メイ
面白いことに、
『ジゼル』では、
これを使い分けます。_φ(・_・
第一幕での
身分が低い村娘から、
死によって位が上がり
第二幕では
ウィリになっている。
この場面(身分)の違いを
シェネの入り方で
演じ分けている訳ですね。
こういったことを知らずに
『ジゼル』を観ていたら、
没入感も浅いものとなるでしょうね
(ただし、本人は気づかない)。
でも、
これを知ってしまったら、
同じ作品を見ても、
今まで以上に楽しめる。
もし、
*|FNAME|*さんが踊る側なら、
踊り分ける楽しさを味わえるようになる(^_-)-☆
と思います。
嘘だと思ったら、
さっき見た動画を
何回か見直してみてください。
最初見えなかった動きが
見えてきませんか?(^_-)-☆
もう戻れませんよ!(笑)
これも小さな一歩。
微差を知るほど愉しくなる!_φ(・_・
そもそも、
なぜ石島がマリアのシェネに
目が止まったのでしょうか?
ロシアバレエ教授法の師匠
ヴァチェスラフ・イリイン先生から
教わっていたからです。
その時のメモをご紹介します。
●シェネの入り方は2種類
①女性はグリッサード・スートニュー・アン・トゥールナンから
柔らかい入り方
柔らかく入って2~3回転ぐらいまで少しずつ加速して、その後もっと速く回る
②男性はトンベから
一気に加速できる動作
最初から速いので、加速する必要なし。ずっと同じ調子で回り続ける
女性は①と②両方使える
①はクラシックのスタイル
→ジゼル2幕、眠り
②はキャラクターのスタイル
→ドンキ、ジゼル1幕(農民)はトンベから入っても良い
※普通の人はトンベから入っても良い
ジゼル1幕はキャラクター、2幕はクラシック(2幕は絶対にクラシックの入り方)
上記は演技法の部分
表にするとこうなります。
↓↓↓
シェネの入り方一つとっても
これだけの情報が含まれています。
・真似るのがバレエ
・教授法なんか学ばない
という人がこれらの情報を
どこから受け取ることが出来るのでしょうか?
8年分でこれくらいありますが…
マリア・ホーレワに話を戻します。
味噌汁をすすりながら
「オーロラ三幕の最後のシェネは、トンベから入っているけど、なぜ?」
と聞いてみました。
身分の高いオーロラが、
身分の低い入り方(トンベ)をしていたからですね。
マリア:「マリンスキーでは、イリーナ・コルパコワを基準に振り入れをするの。彼女はトンベから入っているので、そうしたのよ。」
早速二人でスマホを覗き込みました。
その時の映像がこれ↓↓↓
『眠れる森の美女』第三幕、イリーナ・コルパコワ
石島:「トンベは村娘などの一般人の入り方、グリッサード・スートニューで入るのがお姫様と、教授法で学んだんだけど、それについてはどう思う?」
マリア:「コルパコワ以前のダンサーの動画をチェックしてみよう。シーゾワがいいわ!」
『眠れる森の美女』第三幕、アッラ・シーゾワ
マリア:「シーゾワはグリッサードからだわ。コルパコワがトンベに変更した可能性があるわね。でも実際は、舞台の広さとか傾斜、その日のコンディションとかで変わることがあるわよ。」
という訳で、
二人の探求は続く…
とはならず、
マリア曰く
「そもそも毎回そうなるというものではなく、
状況により揺れは起こり得る。」
ということでした。
とは言え、
どっちでも良いということには
ならない。
たとえば、
舞台が狭いからやむを得ず振りを変える
ということは、
むしろすべきですよね。
ボリショイのダンサーが、
マリインスキー劇場でいつも通りに踊ったら
舞台から落ちてしまったり、
袖に隠れてしまったり
と作品が台無しになってしまいますから。(> <)
バレエのメソッドは、
元々劇場に合わせて作られているので当たり前なことではあるのですが…
実例を一つ。
以前、
ABTに所属していた
ジョゼフ・フィリップス(YAGP金メダリスト)
を招聘してPDDを踊って頂いたときのこと。
舞台がやや狭めであることを伝えたら、
「大丈夫、舞台に合わせていい感じに振りを変えるから。」
と。
まさにこのことですね。
仮にですが、
このときの映像をYouTubeで
見た人がいたとして、
「ジョゼフを真似た!」👀
とやってしまったら、
劣化コピーの出来上がり。ƪ(˘⌣˘)ʃ
本人はその自覚がない。
むしろ、自分は正しいと自信満々。。
いまYouTubeをネタ元にしている人には
要注意ですよ!
劣化を起こさないためには、
そもそもを知る。
これしかありません。<( ̄^ ̄)>
それがバレエ教授法であり、
上位概念である演技法となります。
再びシェネに戻って、
これは揺れかもの例。
ジゼルは第一幕では村娘なので、
正しくはトンベから入ります。
ところが、
1つ目は、
グリッサード・スートニューから、
続く2つ目はトンベから。
『ジゼル』第一幕、ナタリア・ベスメルトノワ
2つ目は、
トンベになってしまったのか、
あえてそうしたのか?
どなたかご存知でしたら、
返信で教えて下さい。m(_ _)m
続いて、
『ジゼル』第二幕(精霊=身分が高い)での比較。
本来ならグリッサード・スートニューで入るはずですが、コルパコワはトンベで入っています。👀
『ジゼル』第二幕、イリーナ・コルパコワ
これをコピーしていたら
(=正しい振りが再生産されなかったら)、
永久メイさんも、
トンベで入っていたはず。👀
『ジゼル』第二幕、永久メイ
本来のグリッサード・スートニューで入っていますね。👀
ブラボー!👏
こうして、
ロシアバレエの伝統は、
正しく継承されているのではないでしょうか?
気がつけば、
もうシェネの入り方が、
見分けられるようになっていませんか?
なった方は、
バレエの愉しさが増してるかも!👂️
86パーセント以上の確率で
劣化コピーしているかも知れない
レッスンからは全力で
シェネシェネシェネ!ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
最後に、
レッスンが劣化しているかどうかの調べ方を一つ。
「シェネの入り方を教えて下さい。」
と先生に聞いてみてください。(^_-)





























